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zoom RSS 子どもの頃のように〜中田英寿が引退

<<   作成日時 : 2006/07/04 16:20   >>

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イタリアのセリエA、フィオレンティーナ(英ボルトンとは1日にレンタル契約切れ)に所属する中田英寿選手が昨日、中田英寿オフィシャルホームページ上で、自ら現役引退の決意を発表した。まだ29歳、プロ生活10年めにしての引退。早過ぎると惜しむ声や、彼らしい美学だと納得するコメントもあったが、引退を聞いたほとんどすべての人が驚き、一様に衝撃を受けた事だろう。オフィシャルページは現在、アクセスが集中しているため他のページは一時的に閉鎖、中田からの引退を告げるメールのみ表示されている。

私が第一報を聞いたのは母からだった(ラジオをよく聞いているので情報が早い)。意外なほど驚きはなかった。ただ確か30歳にはなっていない筈、とだけ思った。もちろん引退までは予想していなかったが、W杯のブラジル戦終了後、ピッチに10分かそれ以上倒れていたのを見て、彼個人にできる事はすべてやった、持てる力を出し尽くしたのだろうと感じたせいかも知れない。半年以上前から、ドイツ大会を最後に現役から退く事を考えていたと云うが、今思えば予選3試合での彼のすべてのプレー、チームメイトに檄を飛ばす姿、気魄のこもったきつい眼差し、ピッチ上の一挙手一投足にその心構えが現れていたのだと思う。
クロアチア戦の記事で「PKを止めた川口の姿に、何も熱いものを感じられないようではダメだ」と書いたが、中田のこうした姿にもチームメイトの心が揺さぶられなかったとは残念な事だ。他の選手たちを責めようとは思わない、彼らなりに精一杯で気づく余裕がなかったのだろう。しかしあの限りなく負けに近い引き分け、対オーストラリア戦、ブラジル戦での負けから、そして川口や中田の必死な姿から、何も学ぶ事がなかったとすればあまりに淋しい。なりふり構わぬ二人の姿はそのまま、サッカーに対する迸る情熱と、無垢な愛の表れでなかったかと思うからだ。

中田自身の言葉を引用しようかとも思ったけれど、いくつかの文を抜き出し、余計な注釈をつけるような事は、どうしてかしたくなかった。よければ上記リンクから、直接読んで欲しいと思う。「マスコミは自分の云った事を正確に報道しない」と、自ら言葉を伝えるべく立ち上げたサイトだ。今までもトレーニングや移動、試合、他の仕事の合間を縫って、こまめにメールを更新してきた。そのどれにも増して、今回の引退を告げるメールには、中田の素直な感情と人知れぬ苦悩が凝縮され、吐露されているように思える。ある新聞記事に、中田が東ハトの社外相談役で年間1200万円を得ている事を、「おいしいアルバイトだ」といかにもな表現で揶揄していたが、どこかの高級官僚が天下り先で無駄金を浪費するのとはまるで話が違う。彼のアドバイスで東ハトは確実に売り上げを伸ばしているし、納得いくまで妥協しない姿勢はここでも同じだ。中田がOKを出した新商品のパッケージは、私のような素人が見ても、最初に担当の社員が提示したものより格段にセンスのいい出来だった。彼がマスコミに不信を拭えなかったとしても仕方ないだろう。

Jリーグに入るとき、強豪でもない湘南ベルマーレを中田が選んだのは、3年で海外移籍させてくれる契約があったからだと云う。当時インタビューしたアナウンサーによれば、10年で唸るほど金を稼ぎ、別の分野へ転身するとも云っていたらしい。すべてが計算ずく、「国のためにサッカーをしているのではない」といった言動や、国際大会で最初のうち君が代を歌わなかった事、マスコミへの無愛想な対応を批判し、彼のファッションセンスをあげつらう人もいる(確かに弾けているなぁ、とは思うが。笑)。セリエAへの移籍も発表当時は、中田のプレーより日本からの経済効果が目的だろうと云われた。そしてペルージャでの、鮮烈なデビュー。ファンやチームメイトのほうが、常に彼を理解していた。イタリアで彼を我儘だと云う者などほとんどいない。ただ監督からは、最初にベルージャで一緒だったマッツォーネ以外、理解して貰えたかどうか。ローマ、パルマ、その他彼の所属したセリエAのチーム、プレミアリーグのボルトンに移ってからも、中田はずっと出場機会に恵まれなかった。サッカーをさせて貰えないのに、どうしてプレーで実力を証明できるだろうか。彼がプレーヤーとして順風満帆だったとはとても云えない、すべてを思い通りにしてきたわけではないのだ。おそらく自らの信じるところを貫く、安易な妥協を肯んじない姿勢が、まわりとの衝突を避け難くしていたのではなかろうか。ただ思い込みをごり押しするだけで、構造改悪を強硬に進めてきたどこぞの政治家と一緒にしないで頂きたい(笑)。中田は結果を残してきた、サッカーにおいては勿論、他の点においても。

現役から引退し、プロとしてプレーする事はなくなっても、サッカーは続けていくつもりだと中田は書いている。目を輝かせて夢中になった、子どもの頃と同じ気持ちで。どれほど歯痒さに胸を噛み、人知れぬ苦悩や悔しさを抱えてきたのだろう。それを思うと、確かに若過ぎる引退は残念だけれど、彼のためには安心したと云うか・・・もう一度無垢な気持ちでサッカーと向き合える事に、ファンとして嬉しさも感じる。美学なんてよくわからない言葉は使わない。中田はただ彼らしいやり方で、この10年をひたすら突っ走ってきたと思う。彼の中ですべては燃焼し尽くしたのだと。ようやく一休みできるんじゃないかな。これからの人生のほうがずっと長い、29歳で新たなスタートを切る中田に、今はただ感謝の言葉を伝えたい。彼が信念を貫いてきたのはむろん彼自身のためだったが、その姿は多くのファンを励ましてきた筈だ。何か貢献できたのか自信がないとも書いていたけれど、サッカー界にも有形無形の大きな財産を残したと思う。
いつかどこかで、無心にボールと戯れる彼を見られたらいい。もしかしたら中田の名前も知らぬ子どもたちと。その笑顔が何より雄弁に、サッカーへの愛情を物語っているだろう。彼の生き方が間違っていなかった事を。

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