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zoom RSS マラメアの海賊・その12

<<   作成日時 : 2007/03/30 13:26   >>

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 このときばかりはライ・ハーンも、首長の言葉が意外だったらしい。軽く目を瞠ると、俄かには信じ難いように口許を歪めた。ザカリアが傍らの副官を見やる。
「おまえはファティマに、他の男と寝て欲しくないか?」
 顔を見る度にあれこれつついてやるんだが、こいつの女房ときたら頑として亭主一筋なのさ。もっとも男と違って、女がそう簡単に、浮気のボロを出す筈もないが・・・。平然と嘯くのへ困ったような視線を向け、ガレリが苦笑した。
「それはまあ、正直なところを云えば。浮気をしたからとすぐ別れたりはしませんが、子どもでもできたら複雑でしょうね」
 ザカリアは薄く笑って、首飾りの入った布袋を懐ろへ納めた。思い出したようにカップを取り上げ、冷めた珈琲で喉を潤す。優美な絵付けと金箔の施された陶器は、彼の骨っぽい大きな手に隠れてしまうほど華奢だ。

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「俺にはわからんな。一国を治める資質に恵まれた人間はそういるもんじゃない。自分の血統になぞ執着してみろ、一体どれだけガキを作らにゃならんと思う?女とやる事自体は大いに歓迎だが、俺の場合、ガキは国を乱すもとになるだけだ。少なくともおまえの祈祷に頼ってまで、欲しがるほどの事はない」
「ご立派な覚悟だが、さて・・・いざ自分の子ができたとき、同じ事をおっしゃれるかどうか。ともあれあなたは、これ以上わたしに稼がせて下さらぬらしい」
「おまえは金がかかり過ぎる。それだけの甲斐はあるとしても」
 辞去すべく立ち上がった祈祷師は、それを聞くと満足げに目を細めた。覆面を引き上げた眼差しに、煙るような妖しい翳がよぎる。
「いずれわたしは、心を許した者の手にかかって非業の死を遂げる。生まれたときにそう予言された。多少生き急ぎたくなっても、仕方ないと思うが?」
「誰でもいずれは死ぬさ。おまえがそれほど生易しいタマか」
 悪霊狩りの際の容赦ないやり口を、まざまざと己が目で見たのだ。20年近く続いた争いを短期間で収めるため、ザカリアもまた非情な鬼と化した。所詮は同じ種類の男とわかっている。ライ・ハーンはくっくっと、さも楽しげな笑いを洩らした。
「アーガランドの件はまた、詳しい事がわかり次第お知らせする。・・・いや、見返りなど心配なさらなくて結構。あの少年に会わせて貰った、ささやかなお礼とでも思って頂きたい。あなたと話すのはいつも有意義だ」

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