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zoom RSS ドブネズミ始末記

<<   作成日時 : 2007/03/10 15:53   >>

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ちろりん村に住む、半年ほど前に「高齢者」の仲間入りをした主婦しのぶ(仮)は、もう三日も眠れぬ夜を過ごしていた。その原因はドブネズミ。
庭に出没して大事なチューリップの球根を食い荒らす、野ネズミとの長期に渡る戦いがいまだ続く中、今度は居間兼台所にドブネズミが入り込んでしまったのだ。
そいつはまず、食パンの袋を噛み千切って開け、中に入っていた三枚ともをペロリとたいらげた。その食べかすが床のあちこちに散乱し、冷蔵庫の下まで続いている。ジャガイモや大根にも齧った痕があり、お菓子の箱は置いてあった場所から床に落ちていた。
戦慄が走ったのは次の日の晩、しのぶが寝ようとしていたときのこと。
何かガタガタ音がすると思ったら、居間の長押の上を、凄まじいスピードで走る黒い影が・・・!しのぶは夜陰に「ぎゃあ〜〜〜!!」と響き渡る悲鳴をあげた。それは黒っぽい灰色の毛をした、びっくりするほどデカいドブネズミだったのだ!

一体どこから、あんなデカいネズミが入り込んだのだろう?
しのぶは床に頭を擦りつけ、あらゆる角度から徹底的に部屋中を調べた。食べ物を食い荒らされるのもだが、大きな黒い糞やおしっこをあちこち撒き散らされ、プンプンと匂うのが何より我慢ならない。しのぶは神経質なほどのきれい好きだ。
台所に置いてある食材をすべて客間へ移し、ネズミに触れられるのが嫌さに、食器やコップも厳重にしまい込んだ。毎日これでもかと掃除をし、隙間という隙間に新聞紙を挟み込んだ。しかしそれらの労働にも増して堪えたのは、ひとときも神経が休まらない事だった。
40歳をとうに過ぎたぐうたらな娘は、まったく役立たずで当てにならない。
ネズミの凶悪な姿を目撃した晩、しのぶの悲鳴に二階から降りてきて、エアコンの室外機へつながるホースを通す壁の穴(長押の上からそこを通って逃げたらしい)に、雑巾を詰め込んではくれた。だが「ネズミは病原菌を媒介するからね、きれいに掃除したほうが安全だけど」と云いながら、掃除や片づけを手伝ってくれる気はさらさらない。興味のある事には寝る間も惜しんで熱中するが、興味のない事となると存在しないも同然という、実に困った性格なのだ。おまけに何を云ったところで、頭がよじれるような理屈と達者な口に、結局は言い負かされてしまう。
「ゴキブリホ○ホイみたく、ネズミを粘着させて獲るワナがあるじゃない。あれを買って仕掛ければいいよ」と、しごく呑気なものだ。そのくせいざ買ってくると、「耳鼻科で色々あって疲れた。説明書を読むの面倒だから明日にして」と、仕掛けてくれない。まるで他人事だ。しのぶは泣きたくなった。これ以上一晩も耐えられない心境だというのに。。。
その晩もネズミは、長押にかけてあった洗濯ものを干すフックを落とし、インスタントコーヒーのボトルを転がして、その存在をアピールした。食材を片付けてあったから被害こそなかったが、やはり糞やらおしっこやらを撒き散らしたので、しのぶは泣く泣く掃除を敢行した。もはやぐーたら娘には頼るまいと決意して。

説明書によるとネズミは、わずか2〜3cmの隙間があれば室内へ入り込むと云う。しのぶの徹底的な捜索によって、そうした隙間は何箇所もある事が判明。エアコンのホース穴に加え、台所の流しの下にも床に通じる穴があり、テレビの裏の壁には、ネズミの齧ったらしいごく小さな穴。衛星放送のアンテナへケーブルをつなぐための穴も・・・。何ということ!道理でどんなにストーブを焚いても、スースーするばかりで暖まらないはず!
しのぶはそのすべてに新聞紙や雑巾を詰め、冷蔵庫の裏といつもおしっこする場所、屋外の通り道と思われる場所の、計三箇所にワナを設置した。ネズミ罠は見開きの本のような形で、その両面に強力な粘着シートが張ってある。片面を壁、片面を床に接して仕掛けるのだ。そして運命の夜。小説を読んでいて他に音がなかったため、ぐーたら娘は台所兼居間を走り回るネズミの音を聞いたという。
次の朝目を覚ますと、しのぶはまず仕掛けたワナをチェックした。冷蔵庫の裏を覗き込んで、ワナが閉じている事に気づく。まさか仕掛けてすぐかかるとは思わず、しのぶはスリッパ代わりに履いている健康サンダルで、上から軽く踏みつけてみた。「キギッ!」足の下から嫌な叫び声がして、バタバタと暴れる気配。・・・間違いない!あのにっくきドブネズミめが、まんまと粘着シートに貼り付いていたのだ!!
望外の喜びに、しのぶは思わず小躍りした。だが待てよ?ネズミは動けないだけで生きている。一体その後始末をどうすれば?説明書を見ると「生ゴミとして処理して下さい」・・・?まぁ確かに、生ゴミではあるが。
とりあえずそのまま、台所に置いておくのは耐えられなかったので、しのぶは何とか家の外へ持ち出し、庭の砂利の上に放置した。

「飢え死にするまでずいぶん長くかかるよ」、お昼近くにようやく起きてきたぐーたら娘は、やはり他人事で「よかったじゃん」と云った後に付け加えた。だがワナの上から踏みつけた話をすると、いきなり「それはいくら何でもヒドい」と怒る。
「ネズミの事であんたに、そんな事を云われるとは思わなかった」と、しのぶ。
「ネズミだろうが人間だろうが、弱って動けない相手を苛めるって行為が嫌いなんだよ」、何に怒るかわからない娘だと思いつつ、万一にも逃げられちゃ困るから、念を入れてシートに押し付けたと説明する。それには「そういう理由なら構わない」と、納得した様子。少なくともネズミが可哀想なわけじゃないらしい。
夕方になるとしのぶは、放置してあったネズミを何重にも新聞紙で包み、ゴミ袋へ入れて固く縛った。ゴミの日までそのまま、外の物置の片隅へ放り込んでおく。それを集積所に出せば、そのときこそ本当にドブネズミとの闘いは終わりだ。
それから一週間あまり、しのぶの家の居間兼台所はめっきり静かになり、他のドブネズミが出没する事もなかった。入り込んだのはワナにかかった一匹のみという事だ。台所の床に散らばる食パンの食べかすを見つけて一週間、しのぶにとって短くも熾烈な闘いだった。背中もたわむほどの疲労は残ったが、何ものにも換え難い心の平安を取り戻したのだ。
折りしも季節は早春、暖冬の今年はすでに鉢植えの梅の花が開き、芳しい香りをあたりに漂わせている。クロッカスやデイジーも、暖かな陽射しを受けて鮮やかに咲き誇っていた。廊下に取り込んであるゼラニウムを、いつ外に出したらいいだろう?一年で一番好きな季節の到来に、しのぶはあれこれと庭仕事の手筈を考え、心躍らせるのだった。(終わり)

注)これはノンフィクションであり、多少脚色こそしてあるものの、すべて実際に起こった出来事です。なお文中に登場する地名、人名については、プライバシー保護のため仮名とさせて頂きました。
・・・これ一度、やってみたかったんだ。うはは☆(^O^)

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コメント(2件)

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お疲れ様でした〜〜(笑)
くれぐれもお母様によろしくお伝えくださいませm(__)m
よしこ
2007/03/10 22:36
おおっ、コメントどうもです♪
母はこの後、カビ○ラーを原液で使って具合悪くするヘマをやらかし、あげく私に「換気してたからいいけど、ああいうのって本気で危ないんだよ。何考えてんの!?」と怒鳴られました。
つくづく不運な人です。(^^ゞ
まもる
2007/03/11 14:57

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