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zoom RSS マラメアの海賊・その15

<<   作成日時 : 2007/04/18 23:54   >>

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 その尾てい骨あたりを、クルスがブーツの爪先で蹴った。
「後悔してんだろう、ええ?せっかくおまえにも経験させてやろうと、なけなしの金を出し合ってやったのに。上手いこと免れるなんざ、つくづく可愛げのねぇガキだ」
 実を云うとこの件は、キア・リダの父親に頼まれてクルスが仕組んだ事なのだ。もうすぐ18歳になろうという息子が、いっかな仲間の誘いに乗る気配もないのを、下手な女に夢中になってもマズいと案じたらしい。たっぷりの軍資金に加え礼金まで握らされ、彼としても否やがある筈はないので、二つ返事で引き受けた。しかしシャヤマンティヤの高級娼館は、滅多な事で一見の客を店に上げたりしない。そこでキア・リダに警戒させず且つ、ウィンダミア総首長の顔に物を云わせて貰うべく、今さら目新しい場所でもないのに、カフヴェ・シンラハルへ同行する事にした。
 ザカリアには『火喰い竜』という馴染みの店があり、ラドローに上陸すると必ずオヴィラプス通りを訪れていたからだ。しかも耳もとに計画を打ち明けると、大乗り気で帰り足を転じたうえ、嫌がるキア・リダを力ずくで引きずって行ってくれた。

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「なけなしの金って・・・前の晩賭博場で、可哀想な金持ちから巻き上げたくせに」
「へっ!金持ちに可哀想な奴なんぞいるかい。いいか、金貨十枚だぞ。ディナリウス金貨が十枚!みんなして代わる代わる、あのバカなでぶを持ち上げたり脅したり・・・どんだけ苦労して賭けさせたと思ってる?その涙ぐましい努力を無駄にしただけじゃ飽き足らず、カードで全額巻き上げちまうたぁどういう了見だ。ええ、おチビさんよ?脳天気な洟垂れ小僧と油断してりゃ、この食わせもんが。まさかイカサマまで使えるたぁな!」腹立ちまぎれにプカプカと、パイプを吸っては紫煙を吐き出す。
 煙の一つが偶然わっかを作り、クルスは目を輝かせて次々と試しはじめた。こんな男だが操船技術は確かで、航海長も岩礁や浅瀬を航行しなければならないとき、霧の深い日などは必ず彼に任せる。今もわっか作りに熱中しながら、片目で常に周囲の様子を探り、舵を取る手も注意怠りなく動き続けていた。嵐ともなればザカリアの登場だが、船長を除けば一番腕がいいのだ。
「サディーヤを呼び戻すよう云って、最後まで譲らなかったからだよ。おれは毎回、勝ったぶんの金貨を賭けようとしたのに」
 応じてくれればイカサマを使う必要はなかったし、チャラにして終わらせる事もできたのだ。アスールはふっと溜息をついた。気がつけば一昨日の晩、彼が七回続けてカードに勝った後と、まるで同じやり取りを繰り返している。

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