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ただでさえ見習い修業はキツい、ザカリアの肝煎りという事であれば、まわりの見る目は余計厳しくなるぞ。『蒼龍』に乗ると決めたとき、父からはそう釘を刺された。自らの意志で親もとを離れる以上、逃げ帰るわけにはいかないという気負いもあった。それをキア・リダは、明るい笑顔で迎えてくれたのだ。ごく自然に接して、余分な肩の力を抜いてくれた。 「父さんも云ってた。世の中に絶対なんて事はない、いつか必ず死ぬという事以外はって。・・・だから大切なんだ。好きな人がどこにもいなくなる怖さに比べたら、傷つく事なんか何でもない」 「アスールの心はとても熱い。カナンは火傷しそうになる」 少女は淡い吐息をつくと、眉間で輝く印に指先をあてた。密生した長い睫毛を伏せ、何事か不思議な韻律を口の中で呟く。女の子のまとう白光の中から、虹色に輝く光の粒が一つ、また一つと現れ、残像で輪を描きながら二人のまわりを躍った。 「ザカリア」カナンはその名を、歌うように響かせた。 「思いを込めてつけられた名前は、生まれて最初の・・・とても強力な呪文になる。カナンはそれを読み解き、アスールの気持ちを手がかりに近づく。無数に存在する命のどれか特定できれば、星がどんなふうに天空を航行し、いつ燃え尽きるかもわかる」 すぐ近くを飛び交う光の粒に見とれ、ただ驚きに捕らわれて、少年は声もなくカナンを見守った。少女がその青い瞳を開く。跳ね回る虹色の光を映し、まるで神秘を宿す星の海のようだ。 「背中から入った破片が二つ、肺と脾臓を傷つけた。ザカリアの体はそれで高熱に灼かれている。・・・アスールは感じない?血の匂いを嗅ぎつけた死霊が、ざわざわと闇を騒がせている。そのせいで波も、冷たく荒れ狂っているのを。新たに多くの命が失われたばかりだから」 海で命を落とした者は死霊となって、嵐に揉まれる船を沈めよう、波に呑まれた者を帰すまいとする。ウィンダミアの船乗りはそう信じていた。だから竜神の社に供物を捧げ、出航前には鎮魂の祈りを欠かさないのだ。戦闘で死んだ海賊や『蒼龍』の乗組員が、ザカリアの命を求めていると云うのだろうか。アスールはゾッとして青ざめた。 「アスールが云った通り、ザカリアの命の炎は強い。カナンの知っているどんな人間よりも。だから死霊も騒いでいる。熱は明日の日没までに落ち着く、夜には意識を取り戻す。ザカリアがこの闘いに負ける事はない」 「カナン、本当に?」アスールがぎゅっと毛布の胸もとを押さえる。 |
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