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zoom RSS 愛だけが聞こえる(15)

<<   作成日時 : 2008/08/25 14:51   >>

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 仲良く手をつないだまま歩き出し、館へ戻って彼女の焼いたパイを食べたのを、つい昨日の事のように思い出す。生地は少し固かったが、中身には充分火が通っていて美味しかった。セシリアはそして、自らの誓い通り小鳥のブローチを大切にし、生涯手もとから放さなかった。どこへ行くのでもそれを身につけ、なぜ公爵令嬢ともあろう方ががあんな、捨てたほうがいいようなブローチをと、まわりをひどく戸惑わせていたものだ。そんなとき彼女は、いかにも誇らしげに「世界に一つしかない宝物」だと云っては、どう反応すべきか迷っていた者たちを、その無邪気さで微笑ませるのだった。

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 しかし本当は、一体どちらが無邪気だったのか。周囲の者たちはなぜああも容易く、わたしたちの互いに対する気持ちが、仲のいい兄妹以上のものではないと思い込んだりできたのだろう。敬愛する大切なお嬢さまにかくも想われているというので、わたしは大抵の男たちからあからさまな嫉妬の目を向けられたし・・・人々の間で話が出るたび、いずれ公爵令嬢の類稀な美しさは、数多くの若者の胸を恋の炎で焦がすに違いないと噂し合いながら。事実セシリアの、外見だけに限らない美しさは、致命的なほど激しい恋の炎をある男の胸に掻き立てたのだ。
 人はまだ幼い二人が、ままごとのような恋をしていたと思うかも知れない。わたしたちはだが、恋などしていなかった。愛し合っていたのだ。いつからかは知らず、ただ純粋であればこそ深く・・・至上の幸福と悲劇とをともにもたらした運命の手に、分かち難く結び合わされて。

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