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zoom RSS マラメアの海賊・その78

<<   作成日時 : 2008/08/30 16:15   >>

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 ベットの上にしどけなく横たわり、女は長い、凝った作りの煙管から深々と阿片を吸った。枕に凭れかかる露わな肩、コルセットで寄せ上げられて、今にもこぼれ落ちそうな胸の谷間。派手なだけで安っぽいペチコートの裾は、立てた片膝からずり落ちて乱れ、艶かしい素足が妖しく火影に照らし出されている。生気のない目はうっとりと忘我の境地をさまよい、紅を注した唇は半ば開いて、どこか淫らな笑みを浮かべていた。
「ほんとに吸わなくっていいの?ここへ来る客は阿片と込みだから、あたしを指名するのよ。割高な料金にも文句を云わない。大体売春婦を買いながら、ただ髪を撫でるだけなんて・・・ずいぶん変な男ね」舌足らずの甘ったるい声で云う。
 阿片の影響で呂律が回らないのだ。目の下に厚化粧でもごまかせない隈が浮かび、その肌は病的なほど青白い。ベットに片脚を乗せて座る男は、差し出された煙管をそっと手で押しやった。娼婦の上に屈み込むはだけたシャツの胸もとには、革紐に吊るした銀の透かし彫りの指輪。彼はその器用そうな長い指で、明るい金髪に染め、こてをあててカールした女の前髪をあやすように撫でていた。

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「阿片では昔、ひどい目に遭ってね。禁断症状を抜け出すのに、ずいぶんきつい思いをした。もう一度繰り返そうとは思わんよ」
 低くはないが艶のある、もの柔らかな声が云った。耳を傾けているうちに眠ってしまいそうな、不思議と心地いい響きだ。
「そんなに変わっているかな?俺は女を甘やかすのが、堪らなく好きでね。悪い癖だとよく云われる。もっともおまえが、鬱陶しいと云うなら・・・子どもみたいに撫でられるのは嫌か?」
 女の耳もとに口を近づけて囁く。娼婦はくすぐったいように、そのまろやかな肩をすくめた。耳朶に息がかかったのだ。
「ほんとに変わった人ねえ。・・・ううん、止めないで。あんたの指にはまるで、魔法がかかっているみたいよ。うっとりするほど優しいから、ちょっと困ってしまうだけ。・・・阿片から抜け出したってほんと?」
「まぁね。ちょいと人から恨みを買っちまって、何日も監禁されたうえ、無理やり薬漬けにされたのさ。だが助けさえあれば抜け出せる」
「あたしにも?」思わず肘をついて起き上がる。

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