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zoom RSS マラメアの海賊・その99

<<   作成日時 : 2009/05/28 20:15   >>

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「ヘススの障害についてなら、およその見当はついてたよ。多少は知識があるんでね。対処し切れない状況に曝されて不安が昂じると、発作を起こす事があるそうだな?そんなときはおまえが云ったように、ある一定のリズムの音を聞かせると落ち着く。能力の暴走も謂わば、「対処し切れない状況」だからな。・・・それが障害の故だろうと、人は理解し難い行動に対して本能的な恐怖を覚える。だが大抵の場合、自分はまともだと思い込んでる奴に限って、易々と人に危害を加えるものなんだ。俺も場合によっちゃ、喜んでやるけどな」
 それを聞きながらメドックは、ともに戦場で過ごした日々を思い出していた。受け取ったグラスをぐいと傾け、葡萄酒を一気に飲み干す。どれほど返り血を浴び、累々と転がる無残な死体を目にしても、デーモンが狂気に身を委ねた事はなかった。彼の率いる部隊もまた、だから踏み止まっていられたのだ。誰一人明日の我が身を憂えずに。盲目の占い師は吐息まじりに首を振った。白皙の面になお、苦痛の名残りを留めたまま。
「いえ、あなたならと期待する気持ちはあったのです。ただ我々にとってさえ異常な状況でしたから、ああも鮮やかに対処されると・・・」
「ふむ、いっそ驚く気にもなれないわけだ。すると俺が、何も尋ねようとしないからか?能力が暴走するほどの何を、おまえの相棒は感じ取ったのかと」
「確かに。何がきっかけで、彼の力が暴走したかを思えば・・・。ヘススはおそらく、重要な鍵の一つを見つけたのです。長官。複雑な要因の絡み合った、何年、何十年も先の事象まで紐解くための。その鍵によって開けられた扉は、さらに多くの扉へ通じ、それがまた無数の未来を開く。膨大な情報量を一遍に感じ取ったせいで、ヘススは単なる未来視の装置と化した。つまり自らの能力に、危うく喰われかかったのです。しかも彼には、物事を関連付け、系統立てて考えるという事ができない。なればこそ膨大な情報量を記憶に留め、取り出す事もできるわけですが・・・。近い未来の限られた出来事ならともかく、行動となって表に現われるのを待つしかありません」
「無数に散らばった破片から、グラスの形を思い描く事はできない。だが特定の一つに、どれをつなげばいいかはわかる・・・そういう事か?つまりヘスス自身にも、何らかの行動が必要になるまでは、感得したものの意味がわからんわけだ。・・・なるほど。それじゃ鋭敏になった能力で、おまえが何か思いがけぬものを『見た』んだな?過読み」
 さらりと云い当てたデーモンに、メドックがグラスを返してよこした。もちろん葡萄酒の壜から、一杯に注いである。ヘススは火影の踊る破片に夢中だ。次々と大きさや形の違うものを翳しては、角度を変えたり素早く動かしてみたり、何枚も重ねてみたりと微妙な変化を試している。

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