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zoom RSS マラメアの海賊・その104

<<   作成日時 : 2009/08/03 16:15   >>

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 大きな背中を窮屈そうに丸め、ポーチの床から一つ一つ、無事なグラスの中へ破片を拾い集めている。娼婦らも入り口から次々と顔を覗かせて、興味をそそられたように見やった。いかついが信頼できそうな、確かに見覚えのある横顔だ。
「あら、あの人・・・何度かうちの店に来た事があるわよね?遊んでは行かなかったみたいだけど」
 露わな肩先や頬にかかる、くるっとした巻き毛の可愛い娼婦が云った。答えたのはぽっちゃりした下唇と、舌っ足らずな喋り方がそそる赤毛の女だ。
「ファニータを助けてくれた人じゃない?ほら・・・いつだったかタチの悪い客に、しつこく言い寄られた事があってさ。すげなくしてたら通りを追い回したうえ、髪を引っ張って殴ろうとしたの」
「ああ、彼女に聞いた事があるわ。無口だけどいい人だって。おかげで長官とも、知り合いになれたんでしょ?」
 こちらはブルネット、細身だが胸の膨らみは充実している。
「そう、その朴念仁だ。あいつを置いていくから、話でもして時間を潰してくれと。そうは待たせないよ」デーモンがにっこりする。
 その目つきや口ぶりに察しよく目を輝かせ、娼婦らはくすくす笑いながら互いにつつき合った。秘密を嗅ぎつけた悪戯っ子さながらだ。長官が自分の唇に、そっと人差し指をあてた。
「早合点するな?まだ全然、そんなのじゃないんだ」
「あら。あたしたち何も、早合点なんかしてないわよね?おバカさんだからまるで想像つかないわ。一体何がまだなの?そんなのじゃないって、どういうこと?」
「ほんと、すごく気になっちゃう。あたしたちってほら、好奇心を抑えられないうえにお喋りでしょ?何かご褒美がないと、ファニータに告げ口しちゃうかも。長官はこう云ってらしたけど、あなたその意味がわかる?って」
 瞳をくるくるさせて、意味ありげに睫毛をしばたたく。他の女たちも彼を取り囲み、期待に満ちた眼差しで見上げる始末だ。何だか餌をねだる子ツバメのようだと、デーモンはつい可愛くなった。
「やれやれ、困った娘たちだ。俺が口止め料を支払うのは、どうも違う気がするんだが。・・・仕方ない。全員にご褒美をあげよう」
 まんざらでもなさそうに、巻き毛の娼婦の腰を引き寄せる。つぶらな瞳を笑顔で覗き込むと、彼は熱烈に抱きしめてたっぷり甘いキスをした。女の喉から酔い痴れた吐息が洩れ、仄白い両腕が堪らずその首筋へ絡みつく。夢見心地でぼうっとする女に、もう一度チュッと口づけては次の一人へ。その繰り返しだ。娼婦らがキャアキャアと嬉しげにはしゃぎ、売春宿や近くに居合わせた男たちは、妬ましさも露わにその騒ぎを見やった。まったく女どもときたら、男を見る目がない。
 そこにいろとメドックを片手で制し、デーモンはマントを肩に悠然とポーチから降りた。向かう先の売春宿では、部下がまだ、客の身元調べや証拠集めをしている筈だ。口止め料にご満悦の娼婦らが、その後ろ姿に山ほど投げキスを浴びせ、笑顔で手を振りながら見送った。

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