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zoom RSS マラメアの海賊・その106

<<   作成日時 : 2009/11/21 01:22   >>

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「また会えたのは嬉しいが、一体どういう風の吹き回しだ?その重たそうな荷物は?アスールに話でもあるんだったら、ちょうど出かけて・・・」
 なおもぺらぺら喋りそうな口へ、ベリルが指先をあてて黙らせた。その目を覗き込んで、うっすらと蟲惑的な笑みを浮かべる。
「ザカリア船長に話があって来た。アスールはいなくてもいい」
「・・・せ、船長に?」思わずドギマギして、カシムが鸚鵡返しに尋ねた。
「剣は預ける。必要なら身体検査も存分に」
 彼女は荷物を足もとへ下すと、剣帯ごと外してサィードに差し出した。訝るように一瞬目を細めたものの、彼には身体検査をする気などないらしい。無言のまま剣を受け取った。二人からじっと見つめられ、カシムはどうも浮ついた調子で肩をすくめる。
「仕方ねぇな。俺は今さら、仇討ちもあるまいと思うけどよ。これは謂わば、疎かにできない義務ってもんだ。きちんと手続きを踏んだほうが、お互いスッキリするだろうし」
 嬉々として実のない言い訳をするのへ、ベリルが何も云わず両手を上げた。カシムがさっそく、必要以上にじっくりと調べ出す。見かけより充実した胸や細い腰、引き締まったお尻を触るときは特に入念だ。
「この荷物は何だ?」サィードがふと尋ねる。
 彼はベリルの答えも待たず、袋の口を開いて覗き込んだ。途端にハッと息を呑み、太腿を検査されている最中の女を見やる。
「・・・そういう事か?」彼はぎらつく目、苦々しい声で云った。
「そういう事だ」と、ベリル。こちらは微笑んでいる。
 反対側で足もとに屈み込んでいたカシムも、この奇妙なやり取りに興味を惹かれたらしい。覗き込もうと身を乗り出したが、サィードは間一髪の差でシュッと紐を締めた。伸ばした手も荒っぽく振り払われ、カシムの目が怒気を孕む。彼は構わず荷物を肩にしょい上げた。
「ついて来い、船長に取り次いでやる」
 カシムよりよほど物騒な顔で女を睨み、サィードはくるりと踵を返した。大股で歩き出す後ろ姿に、ベリルが平然と続く。
「おいこら、待ちやがれ!・・・くそッ、一体何だっつうんだよ?ふざけやがって、無視すんじゃねぇぞ!」喚きながらカシムも後を追いかけた。
 ところがカッカするあまり、勢いをつけ過ぎたらしい。船長室の前でベリルが立ち止まると、その後頭部へごつっと鼻先をぶつけてしまった。扉を叩くサィードをよそに、声もなく手で押さえてうずくまる。アスールに頭突きを喰らい、あらぬ方を向いた鼻は、船医にくっつけて貰った骨がようやく落ち着いたところなのだ。ベリルがそれを、呆れたように見下ろした。

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