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zoom RSS マラメアの海賊・その107

<<   作成日時 : 2009/11/30 02:12   >>

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「船長に客です、通しても構いませんか」
 入れという答えに、サィードが扉を開ける。ベリルの胸もとに荷物を押し付けると、彼は顎をしゃくって船長室の中へ通した。
「剣は預かっているし、荷物の中身も確認済みです。身体検査ならカシムが、執拗なまでにやりました。船長に何か話があるそうなので」
 いかにも事務的な口調で伝え、おざなりに頭を下げる。彼はそれから、鼻を押さえたまま立ち上がり、何事か訴えようとしたカシムの面前でバタンと扉を閉めた。その向こうでギャアギャア喚く声が、次第に遠ざかっていく。サィードが有無を云わせず、引きずっていったものらしい。抱えた荷物に顔を埋め、ベリルがくっくっと笑った。
「ずいぶんと騒がしい事だな」ザカリアが溜息をつく。
 最後に見た一月前と同様、船長はクッションを背にベットの上で身を起こしていた。今日はモナハンでなく、ガレリ副長が傍らに座っていたが。ちょうど食事を終えたところらしく、ベット脇の小卓にからっとたいらげた食器が載っている。
「すっかり回復したようだ、この前よりずっと血色がいい」
「おまえに心配される謂われはない。・・・何の用だ」
 手にした書類へ視線を落としたまま、ザカリアは無愛想に云った。答える代わりにベリルは、袋の口を開けて逆さまにした。船窓から射し込む陽射しに無数のきらめきを放ち、澄んだ硬い音を立てながら、中身が床の上に転がり落ちる。ガレリが目を瞠ったのも道理。ばら撒かれたのは大粒のルビィの指輪に、エメラルドを散りばめたブレスレット、ダイヤとサファイヤの首飾り、真珠と螺鈿で飾られた短剣、カメオのブローチ、珊瑚の髪飾りなどの宝飾品、ブルートルマリン、炎と水のオパール、アメジスト、玉髄や琥珀といった宝石、金銀細工、そして数十枚に及ぶ金貨だったのだ。黄金色に輝く一枚がコロコロと転がり、ベットの足もとで止まった。ガレリが拾い上げ、その純度の高さに感嘆しながらザカリアに手渡す。
「親父が溜め込んだ財宝の一部だ。ある事はわかっていたと思うが」
「ふん、ヴァザラックの強欲には際限がなかったからな。西大陸諸国の沿岸や南洋諸島を荒し回り、他国は云うに及ばず、マラメアの他の海賊船まで見境なく沈めていた。せしめた身代金の額も半端じゃない。もっとも奴に囚われたら最後、人質が無事故郷へ戻る事はほとんどなかったが。どこかに隠し持っているとは思ったさ」
 指につまんだ金貨を、表裏と回して眺めながら云う。

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