天使のたまご

アクセスカウンタ

zoom RSS マラメアの海賊・その108

<<   作成日時 : 2009/12/08 00:59   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

 ウィンダミアのディオル金貨ではない。刻まれた意匠や純度から見て、おそらく7〜800年前にヘザヴィで鋳造されたものだ。希少価値も含めれば、ディオル金貨のほぼ二倍に相当するだろう。当時沈没した船団の残骸がラドローの沖合いで発見され、200枚以上の古代金貨が引き上げられたのは・・・一体何年前の事だったか?ヘザヴィへ輸送する船が途中で襲われ、護衛艦ともども海の藻屑と化したのは?金貨の行方も何者の仕業かも知れず、今までは謎となっていたが。ザカリアは大して興味もなさそうに、床に散らばる財宝の間へその一枚を放った。チャリンと涼しい音が耳に響く。
「その在り処を、娘のわたしが知らぬ筈はない。それなのにあなたは、一言も尋ねようとしなかった。一挙両得の策としても、アスールに教えなかったな?捕虜や人質は奴隷として売り払うか、身代金と引き換えに解放するか・・・それが世間一般の常識というものだ」
「財宝と引き換えだと云えば、おまえは大人しく案内したか?」
 無表情に見やるのへ、ベリルはしたたかな笑みを浮かべた。
「いいや。案内する途中で、どこかへトンズラこいてたさ。陸に降りさえすれば、逃げ出す機会などいくらもある。腕を縛られた女に同情して、或いは下心から助けてくれる、間抜けな男どもにも不自由しない」
「では尋ねたところで無駄だろう。実際うちの船員どもは、女にからきし弱いからな。他の間抜けを探すまでもあるまい。・・・せっかく無条件で解放されたんだ。追及の恐れもなく独り占めできたものを、なぜ自分から持ってきたりした?」
 ブーツの踵をコツコツと床に響かせ、ベリルがベットへ歩み寄った。椅子に座るガレリ副長の傍らで止まり、船長を見下ろして腕を組む。
「無条件じゃない、ザカリア船長。アスールはまっとうに生きろと云った筈だ。誰も知らぬのをいい事に略奪した財宝を独り占めし、安逸に遊び暮らすだけの人生が・・・彼の条件に適う「まっとうな生き方」だと云えるか?それで誓いを果たした事になると?」
 挑むようにきらめくその眼差しを、ガレリは一種感嘆の入り混じった表情で見上げた。ザカリアはだが、手もとの書類に記載された数字へ再び目を落としている。
「おまえがそれほど、まともな人間とは思わなくてね」
「そうだな。まっとうに生きろなんてバカな事をわたしに云ったのは、あの坊やが初めてだ。だから責任を取らせようと思ってね。・・・この財宝はわたしの持参金だ、ザカリア船長。手付金でもある。話によっては残りの隠し場所へ案内しよう。嵩張るものは持って来られなかったが、価値にして軽くこの五倍はある筈だ」
「アスールに惚れたか?まだ童貞だぞ」ザカリアがふっと、唇の端を歪める。

マラメアの海賊・その109へ ☆ ☆ ☆ →マラメアの海賊・その107


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
マラメアの海賊・その108 天使のたまご/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる