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zoom RSS マラメアの海賊・その109

<<   作成日時 : 2009/12/28 00:07   >>

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 その言葉にベリルは、遠慮なく楽しげな笑い声を響かせた。ベットを軽く軋ませて座り、身を乗り出しながら近々と船長の顔を覗き込む。
「まさかわたしが、あの坊やの女房に?・・・それはないな。まあアスールが望むなら、初めての女になるくらいは構わないが」
「ああ、止めておけ。アスールみたいな男に惚れたら、これでもかってくらい幸せにされるぞ。おまえのような女には似合わん。・・・まったく、これが持参金だと?元海賊の女につける値としては、確かに破格かも知れんがな。ウィンダミア首長が目の色を変えるほどじゃない。あいつとの約束を忠実に果たすだけなら、匿名でどこかの施設へ寄付してもよかったろう。なぜわざわざ俺のもとへ持ち込んだ?はっきり目的を云え」
 いいや、訊くまでもなくわかっているのだ。ザカリアの動かない表情を小面憎く見つめ、ベリルは思った。この男はサィード同様、自分の顔を見ても驚かなかった。少なくとも戻って来る可能性は、頭の中にあったに違いない。ならば一体、何を確かめようとしているのか?
「ご存知のようにマラメアでは、賄賂や横領が当然の事としてまかり通っているからな。孤児院や救貧院に寄付したところで、職員の懐ろを無駄に肥えさせるだけだ。・・・親父が奴隷として売り飛ばした、ウィンダミアの船乗りや商人、旅行者は百数十人。あなたはそれを、片っ端から買い戻していると聞いた」
 ザカリアが顔を上げ、気に入らぬげにジロリと睨む。さっきから目を通していたのは、まさしくその詳細な報告書だった。今回消息がわかったのは23人、およそ半数が過酷な鉱山労働に送り込まれている。毎度の事ながら買い手は、移動にかかった費用だの今までの食事代だのを手数料として上乗せし、奴隷市場で手に入れたときより高額な値段をふっかけてきたと云う。鉱山労働者は命に関わりかねない環境にあるため、ザカリアが一刻も早く買い戻す事を最優先させたからだ。その費用は勿論国庫から出ていたが、手続きの一切を代行する在マラメアのウィンダミア商人も、報酬どころか消息の追跡調査に自腹まで切っていた。
「財宝はその資金にあてて貰いたい。それに『蒼龍』の修理費用、我々の襲撃で負傷した者の治療費、亡くなった船員の遺族には補償金として。余った場合は何なりと、あなたの好きにすればいいだろう。わたしには必要のないものだ」
「すべて清算するつもりか。だが耳もとのダイヤは?」
 ふっと意地悪く笑い、書類をガレリに手渡す。いくら国の財政状態は苦しくないと云っても、財宝を補填できれば助かるのは確かだった。売り飛ばされたウィンダミアの民は全部で137人、まだ59人の行方を調査中だ。足もとを見られても買い叩けない以上、さらに費用が嵩む事を覚悟しなければならない。

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