天使のたまご

アクセスカウンタ

zoom RSS マラメアの海賊・その111

<<   作成日時 : 2011/11/24 12:01   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

「荷物の中身は確認済みと云ったな。二人とも見たのか?」
「いや。カシムは身体検査にご執心だったし、覗こうとしたときもサィードが見せなかった」
「ふん、それで騒がしかったのか。サィードは理由を訊いたか?」
「そういう事かと云っただけで、すぐあなたに取り次いでくれたが?どうも彼は、わたしが再び現れると確信していたらしい」
「財宝を目にしただけで、おまえの意図も察した。・・・するとやはり、奴の仕業じゃないな」
 ザカリアが独り言のように呟く。外の様子に注意を払いながら、ガレリも頷いた。
「ええ、わたしもそう思います。アスールを毛嫌いしている事は確かだが、最近の彼を見る限り、あんなやり口を選ぶとは考えにくい」
 相変わらず少年の顔を見ただけで目つきが険しくなり、その存在を自らの部族に対する侮辱だとも感じている。しかし最初の衝突以来、あれほど檄し易かった若者が自ら距離を取り、苛立ちに駆られてつっかかるような真似を一切しなくなった。憎悪だけではない何かが・・・激情を秘めた眼差しや、冷たく吐き捨てる言葉の端々に窺えるのだ。おそらくサィードにとって、アスールの存在を消せば済む類の問題ではない。
「彼はわたしとまた違った意味で、アスールに執着しているようだな。船員の中に誰か、あの坊やを狙う者でも?」と、ベリル。
 ザカリアとガレリ副長が期せずして目を合わせた。この女は確かに使える。
「ヘザヴィの東岸沖で、貴様らの海賊船と遭遇したときの事だがな。ヴァザラックは『蒼龍』が停船するまで、隠れ処の一つである小島を出ようとしなかった。こちらが何事もなく航行していれば、襲撃する気などなかったんだろう?おそらくやり過ごすつもりだった」
「ああ、親父はあれで用心深い男だった。マストで翻るウィンダミアの竜神旗、帆に染め抜かれた首長の紋章・・・『蒼龍』の快速ぶりは海賊の間でも有名だったからな、見張りの望遠鏡に映った時点でわかったよ。こっちのガレオン船は明らかに機動力で劣る、砲門の位置も不利だ。下手な手出しで火傷する気はなかったさ」
 ヴァザラックは停船の報告にも腰を上げなかったと云う。決断したのは『蒼龍』から、急ぎボートが下されている事を確認したときだ。落ちたらしい船員の捜索に気を取られ、周囲に目配りする余裕はないだろう。気づかれずに接近する絶好の機会と見たのだ。まさかあれほど、機敏な対応を見せるとはな。いっそ清々しいようにベリルが唇を歪めた。
「落ちたのはアスールだ。貴様らの交わす信号の光に気づいたのも」

マラメアの海賊・その112へ ☆ ☆ ☆ マラメアの海賊・その110


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
マラメアの海賊・その111 天使のたまご/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる