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zoom RSS マラメアの海賊・その112

<<   作成日時 : 2013/03/18 15:00   >>

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 ザカリアは少年が、切れかかった静索を修理しようとメインマストに登り、一番高い帆桁から落ちたと説明した。そもそもその静索は、誰かの手で切れ目が入れてあったらしいこと、ヤードに繋ぐ金具も油まみれだったこと。調べるうちに今度は足場のロープが切れ、大波で揺れる船から海中へ落下したこと・・・。何とか途中で動索を掴んだものの、金具についていた油のせいで手からすり抜けたのだ。おかげで最悪の事態だけは免れたが、甲板に叩きつけられていたら命はなかったろう。
「ちょうどキア・リダが、メインマストの見張り台にいて一部始終を目撃した。だが拾い上げるのもそこそこに戦闘態勢を取り、『蒼龍』は砲撃戦に突入したからな。その後も乗り移っての白兵戦、二度の爆発、沈没する海賊船からの脱出と・・・それどころじゃない騒ぎが続いたろう。俺は重傷で動けず、キア・リダも危うく命を落としかけた。意識を取り戻した奴の証言で調べたとき、すでに足場のロープは目立たないよう繋がれ、金具の油もきれいに拭き取られていたよ。おそらく体重がかかると、切れるように細工してあったんだろうが」
「なるほど、あれだけ激しい戦闘の後だ。ロープに異常さえなければ、アスールが落ちた原因など忘れてくれる。もしくは詮索されまいと期待したわけか。他の者は足を滑らせるなんてドジだなと、せいぜい笑い飛ばす程度だろうし・・・本人もあの性格だ。首をひねるだけで済むかも知れない。しかし静策の修理に、坊やが登るとは限らないだろう?仕向けた人物がいれば別だが、それなら特定は難しくない筈だ」
 ベリルのもっともな指摘に、ザカリアは溜息をついてクッションへ深々と身を沈めた。苛立ちを拭い切れない声で云う。
「修理を命じたのはグィドだ。キア・リダがやろうかと申し出たのも断り・・・アスールが気に入らないという、お誂えの動機まである。その論法で云えば、グィドの奴が犯人だな」
「だがそうじゃない?」ベリルは訝しげに眉をひそめた。
「アスールはあの通り身が軽いし、労を厭わず働くからね。教育係のグィドがそれをいい事に、あらゆる仕事を押し付けていたのは・・・船内で知らぬ者のない事実だ。必ずとは云えないまでも、あの子が登る確率はかなり高い。つまり犯人特定の決め手とはならないんだ」
 ガレリが淡々と補足する。少年が狙われるおおよその事情は、ベリルの耳にも入っていた。女にからきし弱いと、船長から決め付けられるのも道理。乗組員らは彼女が以前いた間に、何でもぺらぺらとよく喋ってくれたからだ。
「アスールは何と?キア・リダの証言でわかったという事は・・・」
「それについちゃ、いまだ一言もなしだ。犯人の期待通り忘れているか、もっとありそうな事は・・・」ザカリアは不機嫌に顔をしかめた。
「あえて誰も疑わない事にした?」
 ベリルが悪戯っぽく目をきらめかせ、くっくっと喉の奥で笑う。いっそう不快の色を募らせて、船長がその楽しげな横顔を睨んだ。
「失礼、あんまり彼らしいんでね。疑いはじめたら切りがない、大切な仲間をそんな目で見るくらいなら、信じて裏切られたほうがよほどマシってわけだ」

→マラメアの海賊・その113へ ☆ ☆ ☆ マラメアの海賊・その111


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