マラメアの海賊・その82
この薄汚いメスブタが!恐ろしい声で脅しつけ、身を竦ませた女に拳を翳す。大男はだが、ぎゃっと叫んでたたらを踏んだ。振り下ろそうとした手首を掴まれ、肘関節を逆に捻られたかと思うと、逆手に持った煙管の銀の吸い口を、大きく瞠った左の眼球へ突き立てられたのだ。それも力の限りグサッと。盲滅法に振り回す腕から、客の男が鮮やかに身を引く。喚き立てながら血塗れの煙管を引き抜いたとき、今度は半分しかない視界にヒュッと拳が閃き、鼻の付け根あたりで見事に炸裂した。みっともなくひっくり返った用心棒の股間を、軍靴の踵が容赦なく踏み潰す。
「ブタみたいにヒィヒィと、よく鳴きやがるじゃねえか。生憎だったなあ?こちとら貧民街育ちで、汚い喧嘩ならお手のものなんだ。無駄にでかい図体しやがって、相手の見極めもつかんマヌケが!貴様の脳ミソはカラッポか?それとも藁が詰まってんのか、ええ?」
客の男はなおもグリグリと、踵を捻じ込みながら云った。用心棒が苦痛のあまり絶叫し、手足をバタつかせてのたうち回るのにも眉一つ動かさない。煩いとばかり軍靴をドカッと鳩尾へめり込ませ、見下ろす目にはゾッとする冷たい光が滲んだ。
「どうだい?切れ味鋭い刃物と違って、煙管を突っ込まれるなぁまた格別だろ?・・・なに?耐え難いのは目じゃない?クソ野郎めが甘ったれた事を、本気でいたぶられたいか?てめぇらがこの女にした事と比べりゃ、キンタマの一つや二つ、踏み潰されたくらいの痛みが何だ!云っとくが俺ァな、半端じゃなく腹が立ってるんだ。殺さずにいてやるだけ、有難いと思いやがれ!」
唾を吐きかけんばかりに怒鳴りつけ、白目を剥いて痙攣する大男の頭へ回り込む。屈み込んで髪を掴み上げると、その耳もとへ囁いた。
「この国じゃ、人身売買がご法度なのは知ってるな?阿片はもちろん非合法、拉致監禁に売春の強要、脅迫と暴行未遂まで加わりゃ、貴様は一生監獄暮らしだよ。・・・外国人の女、それも戦乱の地を逃れてきた難民なら、罪に問われないと思ったか?突然姿を消したところで、騒ぎ立てる奴は多寡が知れている。当局も真面目に捜したりしないとな?」
そのままガツンと、用心棒の後頭部を床に叩きつける。まったく手加減なしだ。大男は虫の息で呟いた。「きさ、貴様は一体・・・」
「ここの娼婦が首をくくったと聞いて、密かに調べていたんだよ。国境の収容施設から若い女をかどわかし、ラルガのような大都市へ売りさばく連中がいるって事は、前から情報を得ていたしな。そうでなくとも忙しい身の上なんだ、徒らに手を煩わせるんじゃない。ただの腹いせで殺すぞ!」
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「ブタみたいにヒィヒィと、よく鳴きやがるじゃねえか。生憎だったなあ?こちとら貧民街育ちで、汚い喧嘩ならお手のものなんだ。無駄にでかい図体しやがって、相手の見極めもつかんマヌケが!貴様の脳ミソはカラッポか?それとも藁が詰まってんのか、ええ?」
客の男はなおもグリグリと、踵を捻じ込みながら云った。用心棒が苦痛のあまり絶叫し、手足をバタつかせてのたうち回るのにも眉一つ動かさない。煩いとばかり軍靴をドカッと鳩尾へめり込ませ、見下ろす目にはゾッとする冷たい光が滲んだ。
「どうだい?切れ味鋭い刃物と違って、煙管を突っ込まれるなぁまた格別だろ?・・・なに?耐え難いのは目じゃない?クソ野郎めが甘ったれた事を、本気でいたぶられたいか?てめぇらがこの女にした事と比べりゃ、キンタマの一つや二つ、踏み潰されたくらいの痛みが何だ!云っとくが俺ァな、半端じゃなく腹が立ってるんだ。殺さずにいてやるだけ、有難いと思いやがれ!」
唾を吐きかけんばかりに怒鳴りつけ、白目を剥いて痙攣する大男の頭へ回り込む。屈み込んで髪を掴み上げると、その耳もとへ囁いた。
「この国じゃ、人身売買がご法度なのは知ってるな?阿片はもちろん非合法、拉致監禁に売春の強要、脅迫と暴行未遂まで加わりゃ、貴様は一生監獄暮らしだよ。・・・外国人の女、それも戦乱の地を逃れてきた難民なら、罪に問われないと思ったか?突然姿を消したところで、騒ぎ立てる奴は多寡が知れている。当局も真面目に捜したりしないとな?」
そのままガツンと、用心棒の後頭部を床に叩きつける。まったく手加減なしだ。大男は虫の息で呟いた。「きさ、貴様は一体・・・」
「ここの娼婦が首をくくったと聞いて、密かに調べていたんだよ。国境の収容施設から若い女をかどわかし、ラルガのような大都市へ売りさばく連中がいるって事は、前から情報を得ていたしな。そうでなくとも忙しい身の上なんだ、徒らに手を煩わせるんじゃない。ただの腹いせで殺すぞ!」